やはり、味を言葉で伝えるって難しいですね(汗)。もう、そうとしか言えない美味しさの「浅草水口食堂の炒り豚」を紹介します。レシピをもとに再現して、まず思ったのは「あぁ、白いご飯が欲しい! お酒じゃなくて」でした。酒飲みiketchが「酒と合わせるのではなく、飯を食べたい」と言わしめた一品です。玉ねぎも入っているのに「ごまドレレタスではなく、千切りキャベツのマヨネーズ添えが食べたい」とも思ったので、もう、感情の赴くままに作りました。
浅草にある水口食堂さんに失礼を承知で、「孤独のグルメ」主人公五郎ちゃん風に言うなら「これ、これ、こんなんでいいんですよ」というセリフが出てくる料理です。僕なら「おかずなら、これでしょ」です。ケチャップベースなんですけど、醤油やカレーの影が見え隠れし、柔らかい豚肉と適度なシャキシャキ感を持った玉ねぎが必ず、白飯を美味しくしてくれます。なんだろう、野球に例えましょうか。フォアボールやスクイズで地味にランナーを進めて、点数を稼ぐような試合運び、守備はといえばホームランを打たれることもなく、淡々とランナーを潰して無失点に抑える感じ。派手さは全くないのに、相手に出塁も許しているのに無失点、4対0で試合に勝っちゃうような試合運び。職人芸が光るというか、わかってて、この味で勝負している感をすごく感じました。
絶対美味しいという要素を重ねると(最高の食材、最高の器材、最高の料理人とかっていうのを揃えた大層な料理)、大概失敗(破綻)します。でも、それがないのは材料ももちろんなんですが、調味料配分の的確さだと思うんです。給食のメニューに似ています。これ(炒り豚)を食べたことがある人なら、お昼ご飯や夕飯に迷ったら、結局、ここに帰ってくるような説得力があるんですね。「あそこのアレでいいか!」みたいな。ネットで見かけたレシピを、もう少しわかりやすく、材料数も抑えて、かつ家でも作れるように再現してみました。
和食です。ご飯がしみじみ美味しいんです。昭和生まれならわかる、ナポリタンで白飯を食べるような安心感です。こういう料理こそ「無くなっちゃいけない、誰かが引き継いでいかなきゃいけない」と切に思います。だから、ここにレシピを記しましたよ! 筑前煮やうな丼って、だれが考えたかわからない料理なのに、間違いなく日本食って胸張れるじゃないですか? 「炒り豚」も同じ匂いがします。後何十年もたって和食のレパートリーに残る料理だと思うんです。大切にしたい「白いご飯を美味しくする料理」。