大学生の頃、知り合った友人に京都の名物は「にしんそば」だと教わりました。それで2人で食べに行こうということで祇園四条の「にしんそば松葉」さんに食べに行ったわけです。当時で¥1000くらいしてたから貧乏学生の2人にとって決して安い飲食代ではありませんでしたが、大学を出ればお互い京都を出ることは確定でしたので、思い出にと食べました。美味しいんですよね、これが。確かそば、そばつゆ、ねぎ、身欠にしんだけしか載っていないかけそばなんですが、滋味深いというか、上品というか... 京都の人に愛されそうなそばだと思いました。1882年(明治15年)に「松葉」2代目の松野与三吉がにしんそばの発案者と言われています。この松葉は、1861年(文久元年)に芝居茶屋として創業したお店です。 松野与三吉は、京都の人々の大事なタンパク源である「身欠きにしん」をなんとか蕎麦と合わせることはできないかと考え、試行錯誤を重ねた結果「にしんそば」が完成し、洛中洛外に広まっていったそうです。そうか、蕎麦屋にしては派手な出立ちだと思ったのはもと芝居茶屋だった名残なんだ。よくそんなこと知ってたなと今でも感心するエピソードです。その友人も今は立派な方になっていますし、あの日食べた熱々の「にしんそば」が蕎麦屋の店長(元)を育てたんだと思うと感慨深いものがあります。雰囲気だけですが、そんなことを思い出しながら。

つゆが関東風になってしまったのはご愛嬌。にしんの蒲焼缶を載せるつもりで、つゆは創味のしょっぱめ麺つゆをとれたての出しに合わせて調整しました。甘いにしんの旨味がつゆに徐々に溶けてゆっくり味の表情を変えていきます。

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