長年、賄いを作ってくると手抜きというわけじゃないんですが、正直「今日は、これでいいかな... 」みたいな料理を作っちゃう時がありました(もちろん、美味しさは自信ありますよ)。そんな料理の中に「中華丼」「親子丼」はいます。面倒臭い、というよりもその日宴会が入っていたりして、特別な料理を時間差で出さなきゃいけないとか、事務処理が立て込んでるとか、店長には悠長にまかないを作っていられないシーンが多々あります。でも、まずいもの(適当なもの、いい加減なもの)は作れませんし... そんな時に選んでいた料理が親子丼です。過去にも紹介してきた通り、簡単です。それなりに美味しいです。卵と鶏肉の力です。だから、上記の「今日の賄い、親子丼でいい?」と聞いた時「はぁ〜い♪」と嬉しそうに答えられると「なんか... ごめんね」ってiketchは思ってました。

15人前です。いい香りが漂ってます。最初に食べるアルバイトの子がチラチラ覗きにきて、他のアルバイトの子に今日のまかないを伝えます。社員のみんなも食べて、ニッコリです!

なんか知恵を使ってないな〜 って思っちゃってたんですよね。でも、過去、クールな女の子のアルバイトさんが黙々と食べてて「食べられるか?」と聞いた時に目を細めて「うん、店長、美味しいっ!」とか言われた時、「これでいいのかもしれないな、これが美味しいってことなんだよな」と気付かされたんです。その子のそんな笑顔見たことなかったから。しかもモグモグ食べてる姿が可愛らしい。

気合を入れて作ることがほとんどではあります。過去記事の「豚汁」の時もそうでした。でも、適度にリラックスして、今まで胸はって作ってきた料理を作れるっていうのも実は僕の成長なのかもしれません。

「...店長、おかわり食べていいですか... ?」

恐る恐るどんぶりを差し出してくる君。

「これ、お店のメニューにしちゃえばいいのに!」

笑顔で食べてくれる君。

「店長のまかないほんと美味しいっ!」

目を輝かせてくれる君。

そんな君たちが、僕をここまで連れてきてくれたんだと思います。今日のまかないは15人前。みんなが黙々と、ある子は笑顔で食べてくれた「親子丼」。「ごちそうさまでした! 美味しかったです!」「サイコーっす」その言葉をもっと大切にしなきゃと思いました。

19時に食べる子もいれば21時をすぎて食べる子もいる。どの人にもトロトロの親子丼を食べて欲しいから、その都度2人前づつ卵を加えます。それがこのまかない「親子丼のこだわり」です。卵が先になくなりますから、つゆ多めで調整し、卵がなくなってきたら追加して親子煮に仕立てるというアイデアです。みんなが笑顔になるように「よし、頑張るぞ!」となるように。

「胸張って、堂々と、しかもリラックスして、お前がみんなの飯を作れ」

そう、自分に言われた時、僕は自分の部屋でお酒を飲みながら涙をこぼしていました。日々に感謝。合掌。

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