うどん県埼玉で「九州のうどん」の話をすると、通の人からは大概「え〜 あの柔らかいの苦手なんだよな〜 」という答えが返って来ます。文化の違いですね。香川県、埼玉県の人はコシの強いうどんを食べてきた背景がありますから、当然、口に合わない方もいらっしゃると思います。ただ、九州にもうどんの文化はあり、それが愛され、継承されてきたから今回の「かしわ(鶏肉入り)うどん」があるわけです。同じ日本人、お互いの文化を認めていきましょうよ!
というわけで九州全域で愛される「かしわうどん」なんですが、有名どころでは博多、小倉、鳥栖(とす)でしょうか。駅構内で食べられる「かしわうどん」として名高い佐賀県鳥栖市をピックアップして取り上げていきたいと思います。九州で「かけうどん」を頼むとネギと鶏肉を刻んで甘辛く煮たものをのせて供されるところも多いとか。関東圏ではおそらくネギだけですよね、こちらから出向いた人はびっくりされるはずです。おつゆが薄味なので味に強さを出す目的でのせているのもあると思います。なので、あえて「かしわうどん」と言わなくても「うどんとはこういうもの」という認識があるんじゃないかと思います。
「かしわうどん」は他県の方が食べても美味しいと感じさせるバランスの良さがあります。これ、ベースとなっているだしやつゆ、うどんが密接に絡んでいるからです。もちろん、九州はかつおだしを使いますけど「あごだし」が本当に多いんですよね。あごとはトビウオのことで、これから出汁を取る文化があります。鰹に比べて香り立ちも味わいも優しく上品で、家庭料理から割烹料理まで幅広く利用されています。最近は関東圏でも手に入るのでしょっちゅう手に入れては九州の味を楽しんでいるiketchです。脱線しましたが、このあごだしが、鶏肉の旨味と合わさると実に味わい深いんです。相性がいい。鰹と鶏だと香りで鰹、旨味で鶏といった感じなんですが、あごと鶏だと両方の香りと旨味が均等に引き出されます。あごの一歩引いた香りと旨味が鶏を引き立ててくれるんですよね。それをベースにしてつゆを作り、甘辛く炊き上げた鶏肉を加えた優しい食感の九州うどんを食べるところに「かしわうどん」の魅力があります。そこにこだわりました。
iketchはかつおだしや、濃口醤油、コシの強いうどんなんかで作ると「なんか違うんだよな〜 」といつも思います。今回のを作ってみて「そうそう、これこれ! これがうまいやつ!」となりました。もちろん、讃岐も、武蔵野も大好きですよ。遺伝子なんでしょうかね... 九州のうどんだとこういう出汁ベースで、こういう醤油を使って、かしわやさつま揚げをのっけて食べるんじゃなきゃ、本物じゃないと感じるわけです。できる限り、関東(関西でも)で再現できる材料を用いて作ってみました。仕事や旅行(出身の方は別として)じゃないと触れることのない九州の味。この機会に触れてみませんか?
美味しく作るポイント:
麺は40円くらいの柔らかい茹で麺を使用してください。味しみもよく鶏肉との食感の違いもあって美味しく感じられるはずです。コシの強い麺だとつゆを弾くうえに、鶏肉の食感とも被って顎が疲れます(汗)。つゆは薄く感じられるかもしれませんが、これであってます。かしわ煮を崩してつゆに味を溶かしていってください。あご、鶏モモ肉でとった出汁に甘辛いかしわ煮の味がしみて旨味たっぷりのおつゆになっていきます。
甘辛煮のベースとなる醤油なんですが、手に入る人は九州の醤油がいいと思います。煮物や馬刺しなんかが抜群に美味しくなります。ただ、入手難易度が高めですので(ネットだと割高です)濃口、薄口のブレンドで対応すると良いと思います。濃口は塩分が薄口より控えめでコクがあり、薄口は塩分が多く尖った、キレのある味わいです。合わせることで味に奥行きが出せます。ちなみに今回はあごだしの素(ヤマキ)、濃口(キッコーマン)、薄口(ヒガシマル)、味醂(マンジョウ)で作っています。