「吉田のうどん」は強い歯ごたえとコシ、太さのある小麦粉の麺を、味噌や醤油など出汁のきいた汁で食べる富士吉田市周辺の郷土料理です。富士山北麓の富士吉田市は標高700~900mほどの冷涼な気候、火山灰土の地質により昔から稲の栽培には不向きだったため、代わりに小麦、大麦、蕎麦のほか雑穀などを栽培し、合わせて粉物の食文化が進んでいったようです。ここら辺、やはり稲作で苦しんだ武蔵野うどんと背景が似ていますね。

かみごたえ十分! 武蔵野うどんのライバルは山梨県にもいました。

また、昭和初期、富士吉田では繊維業が盛んで、織物の機械を動かす女性が、昼食の準備で作業が止まらないように、また、絹糸を触る手が荒れないようにと、行商担当の男性たちが昼食にうどんをつくるようになったといわれており、彼らが「腹持ちの良いうどん」をと力強く練るため、歯ごたえ、コシが特徴となったといいます。山梨県の郷土料理としては「ほうとう」が有名なんですが「吉田のうどん」もまた昔から親しまれているため、現在では富士吉田市周辺に限らず、山梨県の名物としても名高い一品です。通年食べられていますが、うどんは長い食べ物であることから、長寿祈願や末永く幸せでいられるようにと、盆や正月、結婚式など祝いの席で食べられる縁起物であったため今でも人が集まるところでは締めくくりにはうどんが出されることが多いようです。

取材旅行の際、図らずも以前立ち寄れなかった談合坂SAに立ち寄れたため、「吉田のうどん」を幸運にも入手することができました。元麺職人iketch、本気の再現いってみましょう!

うどんに馬肉大和煮に茹でキャベツ。歯応え十分、食べ応え十分!

うどんを茹でる前にキャベツと油揚げを茹で、馬肉の大和煮を温めます。麺は説明書では8分とありましたが、当方ラジエントヒーターですので倍の16分で調整。つゆは記載通りに希釈して挑みました。結果は...

16分湯掻いて芯がない事を確認。冷水で締めすぎないように麺を仕上げ、つゆ、具材を合わせました。やはり、吉田のうどんはかけではなく、つけうどんに向く気がする。

「やっぱ、麺が勝ってる。つゆが敗北してますね。だからの馬肉大和煮か... でも、どうなんだろう、美味しいけど... 」

う〜ん、僕らしからぬ歯切れの悪い回答となりました。うどんはまだありますので、調整後のものをまた取り上げますが、あのね、コシの強いうどんって、かけうどんに向かないんですよ。つゆを弾いちゃうんです。まして、キャベツと油揚げのゆがいたやつがつゆを薄めてる。これならいっそ出来上がった馬肉の大和煮と和えて旨みを出した方がいいかもしれません。せっかく馬肉の大和煮が頑張ってるのに、僅差でつゆが押されている感じです。食感は武蔵野うどんに似ています、こいつはかけに向かない強いコシがあります。博多うどん(かしわうどんで検索)だと俄然かけうどんがつゆと絡んで美味しいんだけど、もりうどんだと味気なく感じる、その感覚に似てます。そう考えるとやはり、讃岐が温冷で一番バランス取れてるのかなぁ、と思いました。

郷土料理ってどれもだいたいそうだと思うのですが「その料理が必要とされる環境に、必要とされる形と味で現れ、文化や慣習と融合しながら根付いていったもの」とiketchは認識します。何かの歯車がうまく噛み合って「郷土料理」として形を残したんだと思うんです。富士吉田市の人たちは胸張っていいと思います。富士吉田市の環境じゃなければ「吉田のうどん」は生まれなかったし、育たなかった。宮崎県のがめ煮もそうですけど「筑前煮」慣れている人だと、正直、骨付きの鶏肉って食べるのが面倒なはずです。その程度の誤差です。

コシの強いうどんは小麦が香ります。これがうどんの美味しさの本質。カツオの香りと共に私たちの心と胃袋を満たしながら、吉田のうどんはこれからも末長く続き、技が継承されていくことでしょう。好敵手よ、日本の未来に足を進めよう。

参考レシピ(補足):

今回、山梨県笛吹市、株式会社ワタショクさんの「吉田のうどん」を使用し、マニュアルをもとに再現しました。ラジエントヒーターだとお湯が冷めてから沸騰までの立ち上がりが遅いので火加減を調整し沸騰状態を維持しつつマニュアル8分を16分に変更、茹で湯は2リットルキープで茹で上げました。付属のつゆは甘口で桃屋さんのつゆに近い感じです。馬肉は自家製でいこうと思ったんですが、思ったより付属のつゆが優しい味のため、キョクヨー(株式会社極洋)さんのランドエース肉大和煮(馬肉味付)を乗せて旨みを溶かす形にしました。キャベツと油揚げはサラッと茹でただけです。もし、皆さんが再現される場合はコシの強い乾麺か冷凍うどんを使用し、桃屋さん、ヤマキさん系の甘めの麺つゆを希釈して作るといいと思います。

コメント一覧
  1. 「吉田のうどん」の歴史と文化について興味深いですね。富士吉田市の気候や地質が小麦の栽培に適していたことで、このような独特の麺が生まれたのでしょう。特に、繊維業が盛んだった時代に、働く女性たちのためにうどんが作られたという背景は、地域の生活と深く結びついています。また、長寿祈願や祝いの席で食べられる縁起物としての役割も、日本人の食文化の豊かさを感じさせます。それにしても、コシの強いうどんがかけうどんに向かないという意見は、うどんの食べ方について新たな視点を与えてくれますね。どうして「吉田のうどん」はかけうどんよりも、もりうどんや他の料理法に向いているのでしょうか?

  2. 吉田のうどんは、その強いコシと歯ごたえが特徴的ですね。富士吉田市の冷涼な気候と火山灰土が、この独特の食文化を生み出したようです。特に、繊維業が盛んだった昭和初期には、作業を止めずに済むよう、腹持ちの良いうどんが作られるようになったと聞きました。その歴史と背景が、このうどんの魅力をさらに深くしていますが、実際に食べてみた感想はどうでしょう?つゆとのバランスが気になります。

  3. 吉田のうどんは、その強いコシと歯ごたえが特徴で、特に山梨県富士吉田市の郷土料理として親しまれています。富士山の冷涼な気候と火山灰土壌が、このうどん独特の食感を生み出した背景となっています。また、織物業が盛んだった昭和初期には、女性たちの手を荒れさせないため、また作業を止めないために男性たちがうどんを作ったという歴史もあります。うどんは長寿や幸せを願う縁起物としても使われ、特に祝いの席で食べられることが多いです。しかし、かけうどんとして食べる際には、つゆが麺のコシに負けてしまうという課題もあるようです。吉田のうどんの魅力を最大限に活かすには、どのような調理法が最適なのでしょうか?

  4. 吉田のうどん、コシと歯ごたえがたまらないですね。富士山麓の気候が生んだ独特の食文化、深みがあります。お祝いの席で食べられる縁起物というのも素敵な習慣です。やっぱり馬肉の大和煮との組み合わせが最高なのでしょうか?このうどん、かけうどんよりつけ麺や和え麺の方が合う気がしますが、いかがでしょう?

  5. 「吉田のうどん」は、その強いコシと歯ごたえが特徴的で、富士吉田市の地域色を強く感じさせる料理ですね。特に、冷涼な気候と火山灰土質が小麦の栽培に適しているという背景が、このうどんの独特な食感を生み出したのでしょう。製法や歴史について知れば知るほど、郷土料理としての重要性が感じられます。また、馬肉の大和煮との組み合わせも興味深く、味のバランスをどう調整するかがポイントになりそうです。うどんのコシの強さがつゆとの相性に影響を与えるそうですが、皆さんはどのようなアレンジを試してみますか?

  6. iketch より:

    ご覧いただきありがとうございます。麺は茹で上げると基本モチモチして弾力性がなくなります。冷水でしめて滑りを取ることで喉越しよくコシのあるうどんに変わります。吉田のうどんもまた稀有なうどんで、抜群のコシと小麦の風味が特徴です。上記やり方で強い味付け(濃い味付け)のつゆをキリリと冷やしてつけて食べるとその持ち味を活かせるかと存じます。その検証につきましては後日記事を掲載させていただきます。
    市販の缶詰め、瓶詰め、レトルト食品を使用する際はベースとなる(ご飯、うどん、そば、パスタなど)の味付けにご注意ください。ヒントは過去ブログ「マイルドチャーハン」「マイルドスープ」で検索してみてくださいね。

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