いろいろ悩んだんですが、見ている人がいる以上必要なことと思い書きます。まず、今月はあくまでインスパイア中華、空想中華ということで、紹介しているお店の味を保証するものではありませんし、ここでのレシピで作って美味しくなくてもお店には何の関係もありません。そもそもiketchが各店の味を完全再現できるなら、どのお店も誰にとっても必要ありません。そうじゃないから、何十年もその土地で「美味しさ」を提供し続けていられるわけです。
しきりに登場する「マイルドスープ」と「マイルドチャーハン」なんですが、正直、完成品ではありません。自分の作る麻婆豆腐や青椒肉絲を受け止めるための台座としているだけです。だから、市販の麻婆豆腐の素で作った麻婆豆腐をかけたり、冷凍チャーハンにiketchレシピのおかずをのっけても美味しくなりません。自分のレシピで作った料理を受け止めた時に完成する味付けなんです。
例えば町の中華料理屋さんで常連さんくらいになると、お店の主人もちょっと私たちのわがままを聞いてくれたりします。「麻婆チャーハン」とか「天津麺」とかそんな過程で生まれたんじゃないかなと、iketchは思うんです。そうなると難しいのは味のバランス。繰り返し言ってるように「1+1=2」です。味を破綻させないようにそれぞれの料理のバランスをとりながらご主人たちは「1+1=1」に仕上げてくれているはずです。それって自分の店の料理の特性やクセを熟知していないとできないんです。それこそ目を瞑ってでも作れるくらい熟達していないと、まず無理です。僕らが簡単に思うことは簡単にできることではありません。
iketchのレシピに合わせた「マイルドチャーハン」「マイルドスープ」だから成立する味。僕もお恥ずかしながらそれくらいの経験は積んできたということなのでしょう。テーマやゴールというのも僕がよく使う言葉ですが、「2つ以上の料理を組み合わせたものを作るときは、明確なテーマが必要」です。一品一品の料理を大事に作りながら、確実なレパートリーを増やし難しい一品に挑戦していきましょう。