さてさて、おでんもいくつか紹介してきたんですが、やはり「おでんつゆ」、これが大事だと思うんですよね。特におでんは練り物がいろいろ入るので、長く煮込むと塩味がスープに溶け過ぎます。こんにゃくや厚揚げ、大根、卵とかならいいんですが(味がよく染みるので)、とにかく練り物だとしょっぱい。じゃ、薄味にしとけばというとそう言う問題でもない。やはり、出汁感がタネにしみないと、美味しくないわけです。
そこで、前回鰹単体でいった「おでん」。塩味を調整して、だし感をもっと強く引き出していけばいけないかな? と考えました。「だしが旨いおでん spec2」といきましょう! オデン、デンデデン... オデン、デンデデン... (ターミネーター風)
さ、バカなこと言ってないで先を急ぎましょう。今回は「大将の八方だし」をベースに作ってみることにしました。これはまかない系YouTuber大将が監修しただしパックで鰹枯れぶし、削り節、昆布粉末、椎茸粉末、あご煮干し粉末を絶妙な配分でブレンドし、酵母エキス、食塩、発酵調味料、醤油粉末で調整したものです。そう、もううっすら味がついているんですよ。で、それがあまりにも自然な塩味で、尖った感が全くないシロモノなんです、これが。このままいってみるか...
そして、結論なんですが、いい感じで塩味がおだしに溶けました。あとは普通におでんつゆの味付けです。多分、犯人は「練り物(さつま揚げ、ちくわなど)」です。練り物ってそのまま(冷たいまま)食べると冷たさのせいもあってほんのりしか塩味を感じないんですが、結構、食塩使ってますよね、あれ。うどんもそうなんですが、塩は弾力や生地の生成に必要不可欠。使わないと形を作れないわけです。ハム、ベーコンもそうです。健康についての講釈はしませんが、加熱すれば当然スープに溶け出します。
翌日も食べることが前提なら、おだしの中に入れたままにせず、入れた分の練り物は食べ切りましょう。ポトフなんかもベーコン入れて煮込むといい出汁が出ますよね? 練り物をたっぷりおだしにつけたままにすると塩が出過ぎてしまうわけです。だから、前回の「ガチのおでん」のレシピでも書いたように「スープに食塩は控えめに」ということと、今回のようにだしが強い力を持っている場合は「だしの力を信じろ」と言えるわけなんです。野菜やお肉、練り物の素材を旨いだしで食べる、おでん。塩化ナトリウムの塩味を減らして、イノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸の旨味を効かせていきましょう。素材の力いただきます!
追記:ひより味(み)?
イノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸などの旨味を、僕は個人的に「ひより味(日和見/ひよりみ)とよんでいます。味の弱い食材と出会うと優しい塩味でフォローし(病院食など)、強い食材と出会うと穏やかな甘味で旨みを付与するからです(鍋料理など)。だしは料理の前に出たり、後ろに引っ込んだりしながらおいしさをコントロールしています。だからこそ、だしを「日和見(強い味をさらに強くし過ぎたり、弱い味を全くフォローしなかったりするような使い方)」をさせないようにコントロールすることが大切なんです(調理方法で敵にも味方にもなるってことです)。
さて、練り物の老舗「紀文」さんが、美味しいおでんを作るための10ヶ条をHPで公開していましたので引用させていただきます。
おいしいおでんを作る10ヶ条
- 大きめの鍋で、具(たね)が浸るぐらい汁をたっぷりと用意。
- 具(たね)はいろいろ用意して、味や食感の変化をつける。
- ゆで玉子は固ゆでに。大根やこんにゃくは表面に隠し包丁を入れる。
- 煮えにくいもの・味のしみ込みにくいものから順番に煮る。
- 弱火でコトコトがポイント。強火は煮くずれ・煮つまり・汁のにごりの原因に。
- 鍋にフタをして煮込むときは必ずフタをずらす。
- 汁が煮つまったときは、味をみてお湯か汁を足す。
- 練りものの旨みがおでん汁に出過ぎないように、練りものを煮る間は10〜15分。
- はんぺんは食べる直前に入れ、汁をかけながらさっと温める。
- 揚げものは油分が気になるときは熱湯でさっとかける程度の油抜きを。
今回のおでんつゆは「大将の八方だし」をベースにしたプロ仕様になります。鰹と昆布でしっかり出汁を引いて、おいしいおつゆを作ってみてください!
参考:紀文HP「おでん教室」