小学校の頃、家庭科の授業がありまして、まぁ料理作ったり、裁縫したりをするんですが僕はこの授業が案外好きだった記憶があります。憧れの女子というのがクラスには必ず一人いるもので、ここでは仮に雪子ちゃんとしておきましょう。雪子ちゃんはクラスの優等生で、運動神経も良く、当然、男子にすごい人気がある子でした。女の子うけも良かったからその当時珍しいくらいの出来た子だったのではと思います。当然、美少女です。当時のiketchはというと文系のオタクで、スポーツはからきしダメ、趣味は読書という陰キャでした。ある時家庭科の授業でたまたま一緒の班になり、その日の調理は「鮭のムニエル」でした。他の男子は最悪で調理は僕に投げっぱなし。当時、飲食業界に入るなんて思ってもいなかった僕ですし、ただ責任感は一丁前に持ち合わせていたものですから「面倒なことは、全部僕か... 」くらいに思って黙々と調理していました。雪子ちゃん以外の女子もおしゃべりに夢中。結局、僕が教科書を元にグラムや調理法の検討をつけ、メインで作り続けるのを雪子ちゃんがアシストしてくれるという流れでした。さて、実食。「〇〇くん、すごく美味しい! 料理上手なんだ」なんて笑顔で雪子ちゃんに言われて、しどろもどろに「おばあちゃん手伝ったりするから... 」みたいな受け答えをしていたと思います。全部綺麗に食べてくれて(他の連中もそうでしたが... お前らも協力しろよ)、家庭科の成績は良かったです。その後はジャーナリストになりたいなんて頑張っていた自分なんですが、こんなところに飲食へ進むきっかけがあったのかもしれません。大好きな人の笑顔。飲食やっている人の多くがお金(賃金)以外のところにやりがいを見出している原点じゃないでしょうか。当時のレシピなんて覚えていませんし、今の実力で作った鮭のムニエルですが、この言葉をネットで見かけるたびに村下孝蔵さんの「初恋」という歌をバックにその後あまり見ることのなかった雪子ちゃんの笑顔が思い出されます。
ポイント:ムニエルとは何?
「ムニエル(meunière)」とは、小麦粉をまぶした魚をバターをひいたフライパンで焼きあげる調理法のことです。 語源はフランス語で粉屋を意味する「ムニエ(meunier)」で、ポワレとの大きな違いは必ず小麦粉とバターが使われることです。後、レモンを添えます。ところで「ムニエル」の他に「ソテー」や「ポワレ」と言う料理があります。いずれもフランスに由来のある料理なのですが、ソテーやポワレでは小麦粉を食材にまぶしません。 また、ムニエルは一般的に魚を食材とし、ソテーやポワレは肉が使われる事もあります。ムニエルは強火で一気に周りを焼き、旨味をフラワーコーティング(小麦粉をまぶした)した中に閉じ込めます。香ばしいバターと焼けた小麦粉の香りが特徴的で、魚介の旨みをさっぱりとしたレモンの風味で頂く料理です。